2012/07/24

おおかみこどもの雨と雪 感想(ネタバレ有り)

見てきました。
この感想は基本、細田守監督作品としてどうか、ということに主軸を置いていることを前提としたものになりますのであしからず。

最初から結論。

やっと、細田守監督のの本気を見れた気がする。
これを本気と言わないのはさすがに失礼だろ。

です。

非常に個人的かつ主観的な見解で申し訳ないのだけれど、デジモンで細田監督の作品にほれて以降作品を追いかけていく中で、正直近作の「時かけ」「サマーウォーズ」の二本に対して、細田監督の本気、全力を感じられず、非常に不満を感じていました。どこが?と問われてもそこは非常に主観的で感覚的なものなので説明はしづらいが、少なくとも「サマーウォーズ」は「ぼくらのウォーゲーム」の劣化リメイクでしかないと思えず、非常に評価が低かった。
それでも二作とも世間での評判は高く、成功もしていたので、細田監督がメジャーになるためにそういう計算の上で作品を組み立てたのかなあ、と納得していました。

その上で、そろそろ細田監督の本気が見たいよねえ、今回は完全新規オリジナルだし期待できるかなあ、という気持ちで臨んだのが「おおかみこども」だったわけですが、その結果が先の結論となります。



以下ネタバレを含みつつの具体的な感想です。

見る前の予告等の印象から、ファミリー向け、子供向けの印象を持っていたのだけれど、これが予想に反してハードというか生々しさのあるものになっていて、そこでひとついい意味で裏切られた。
同様に設定から勝手に現代を舞台にしたおとぎ話かファンタジーっぽいものを想像していたのだけれどこれも違った。
出会いから出産、子育てまで順繰りに時間経過を追っていく形で話が展開で、前半は、狼男のこどもを身ごもったら、どうなるというのをSF的な理詰めで、助産院や児童相談所、病院、公園でのことをどうするか、といったことが生々しく描写される。
きわめつけなのが、セックスシーンと本能のままに狩りをしてしまい事故で死んでしまったお父さんの狼姿の死体が運ばれていくシーン。
描写的にも省略して説明できるものをわざわざ描いて見せているところが多く逃げていない。
これらのちょっと生々しい嫌な描写は、ある意味で「ファミリー向け」であることを拒否してしまう危険性をはらんでいる。
しかし、これらの描写が不要なものなのかというと、そういうわけでなく後半、田舎に移り住み子供が育っていった結果、二人が狼として生きるか人間としていきるかの分かれ目に意味と重さを与えている。

やや重苦しい都会での描写を抜けて、田舎に移り住んでからは、開放感もあり楽しい描写も増えるけれど、田舎暮らしと子育てのの大変さが描かれ、淡々とした時間経過の中で子供の成長が描かれていく。
気の強いお姉ちゃんの雪が、成長して学校に通いだし、クラスの男の子との事件とそれ以降の交流をきっかけに次第に人間であることを選択行くのに対し、おとなしく最初田舎にも馴染めなかった弟の雨が、学校に馴染めず、次第に山へ入るようになり、狼としして生きていくことを選択していくのは、意外さもあり、面白かった。

そして、狼として生きることを選び母親に背を向けて行こうとする雨に対して花が叫ぶ台詞
「まだ何もしてあげられていない!」
人間年齢にして10歳くらい、早すぎる親離れとはいえ、母親としてあれだけ苦労してっ頑張って愛情を注いできたのに、そんなはずないだろ!と心の中で突っ込みで否定しつつこのシーンで涙腺決壊。
それまでが淡々とした描写の積み重ねでドラマ的な山が少なかった分ここでのクライマックスはくるものがあった。」同時に、花の母親としての愛情の重さ、背負ってしまったものの過酷さ、孤独さ、それに比してそれを苦労と思わず泣き言をいわず、ここまで生きてきた花の強さにやられてしまった。

正直この映画は、どういう層にどの様に受け止められるか、想像できない。
未婚、既婚、子育て経験有るなし、年齢、性別で受け止め方は多分多様なものになると思う。
それだけ受けての受け止め方に任された映画になっているのではないかと思う。
自分はいい年して未婚だし、しがないアニオタなので、この映画を見た後に感じるのは、ウチのカーチャンもきっと俺で苦労したんだろうな、ゴメンなぁというやや気まずい気持ちにさせられる程度ではあるのだけれど。

一緒に見に行った友人の評で、散文的でやや退屈だったといった趣旨のことを言われて、自分はそうか?と思いつつ、確かに全体を通してみると長さの割に物語としては起伏のないドラマの薄いものになってはいるので、エンタ性にかけると言われればそうかもしれない。
「時かけ」「サマーウォーズ」がエンタ性やメジャー性にに気を使った作品だったのに比して、今作が、そこで稼いだ観客や評価を一旦捨てにきている。
かと言ってテーマや内容が狭いマニアックなものになっているわけではなく、より一般向けなものになっていて、メジャーに向けた顔と細田監督の本気具合とがいい具合にバランスのとれた作品になっているのではないかと思う。
この作品に関しては、自分の評価よりも細田守監督の真価が今後どう問われていくかの分岐点になりそうで、そういうい意味でどう評価されていくか楽しみでもあります。



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